プライベートなのに、仕事のこと考えちゃってない?
仕事が終わって家に帰ったのに、今日あった嫌なことを思い出してしまう。
せっかくの休日なのに、明日の仕事が気になってしまう。
そんな経験はありませんか?
一方で、休日にふと仕事のアイデアを思いついたり、「次はこうしてみよう」と考えたりすることもあります。
どちらも、プライベートな時間に仕事について考えていることには変わりありません。
でも、この2つは同じなのでしょうか?
実は、心理学の研究では、仕事について考えることにも種類があり、その内容によって心身との関連が異なることが分かっています。
今回は、仕事のことが頭から離れないとき、何が起きているのかを考えてみたいと思います。
仕事のことを考えるのにも、種類がある?
仕事について考えることは、研究ではいくつかの種類に分けられています。
ここでは、代表的な3つを紹介します。
① 嫌なことや不安を繰り返し考える
「今日、上司に怒られたな」
「明日もまた失敗したらどうしよう」
「なんであんなことを言われなきゃいけないんだろう」
このように、仕事で感じた嫌な気持ちや不安を繰り返し考えることは、研究では「感情的な反すう」と呼ばれています。
反すうとは、同じことを何度も考え続けることです。
仕事についての感情的な反すうは、疲労や睡眠の問題との関連が報告されています。
例えば、Syrekら(2017)は、週末の仕事に関する反すうと睡眠の問題との関連を調べています。
仕事は終わっているのに、頭の中では嫌な出来事が続いているような状態です。
② 仕事をより良くする方法を考える
「あのお客さんには、こんな提案をしてみようかな」
「次は、こういう順番で説明してみよう」
「この問題は、こうすれば解決できるんじゃないかな」
こちらは、仕事の問題を解決したり、改善したりするための思考です。
研究では「問題解決的な思考」と呼ばれ、感情的な反すうとは区別されています。
Weigeltら(2019)の研究でも、仕事に関する思考の種類によって、心身の状態や仕事への関わり方との関連が異なることが示されています。
興味深いのは、仕事について考えているからといって、必ずしも同じように疲労や不調と結びつくわけではないということです。
ただし、問題解決を考えることが、必ず心身の回復につながるという意味ではありませんよ。
例えば、「次は失敗しないように、どうすればいいだろう」と考えているとき。
解決策を探している一方で、失敗への不安も感じていることがあります。
つまり、問題解決的な思考と、嫌な気持ちを伴う反すうは、実際の経験の中では重なり合うこともあるのです。
また、考えている内容が前向きでも、それを負担に感じているなら、それは負担なのです。
次の③を含めた3つの種類は、自分の思考を理解するための手がかりであって、どれか一つに必ず当てはめるためのものではないんです。
③ 仕事で良かったことを思い返す
「今日はお客さんに喜んでもらえたな」
「難しい仕事だったけど、うまくできたな」
「自分なりに成長できた気がする」
仕事で経験した良い出来事を振り返ることも、仕事についての思考の一つです。
SonnentagとNiessen(2020)の実験研究では、仕事の肯定的な出来事を振り返ることで、その直後の気分が良くなるという結果が報告されています。
ただし、これも「前向きに考えれば疲れが取れる」という話ではありません。
大切なのは、仕事のことを考えているかどうかだけでなく、何を、どんな気持ちで考えているのかという違いです。
同じ人でも、仕事のことを考える気持ちは変わる?
ここで、少し私自身の経験を紹介させてください。
私は以前、営業の仕事をしていました。
社会人1〜2年目の頃は、営業成績が振るわず、上司から毎日のように叱られてましたね。
当時は仕事が嫌で、プライベートではできるだけ仕事のことを忘れたいと思っていました。
仕事が終わると、ゲームセンターに行って『jubeat(ユビート)』という音楽ゲームを遊んだり、一人でカラオケに行ったりしていました。
気づけば夜遅くまで遊んでいることもありましたね。
遊んでいる間は、仕事のことを忘れられるんです。
でも、遊び終わると、また思い出します。
「ああ、明日も仕事か……」と。
今振り返ると、当時の遊びは、私にとって「麻酔みたいなモノ」だったのかもしれません。
つらさを感じない時間を作ることはできても、仕事で抱えていた問題そのものがなくなるわけではありませんでした。
ところが、社会人3年目以降、少しずつ状況が変わりました。
自分なりに工夫したことが営業の成果につながるようになったのです。
すると、休日にも仕事のことを考えるようになりました。
「あのお客さんには、こういう提案をしたら喜んでもらえるかな?」
「次はこんなことを試してみたいな」
以前は忘れたくて仕方なかった仕事について、今度は自分から考えるようになっていたんです。
もちろん、私の経験だけで、仕事の成果が上がれば誰でも前向きに考えられるようになるとは言えませんよ。
ただ、同じ私でも、仕事について考える内容や、そのときの気持ちは大きく変わったことは事実です。
研究で区別されている思考の種類は、こうした違いを理解する手がかりになります。
仕事を考えない時間にも、意味がある?
では、仕事について前向きに考えられるなら、休日にも仕事のことを考え続けていていいのでしょうか?
ここで、もう一つ紹介したい研究があります。
心理学には「心理的ディタッチメント」という考え方があります。
簡単に言えば、仕事をしていない時間に、心理的にも仕事から離れることです。
SonnentagとBayer(2005)の研究や、WendscheとLohmann-Haislah(2017)のメタ分析では、仕事から心理的に離れられている人ほど、疲労が少なく、睡眠の状態が良い傾向が報告されています。
これは主に関連性を示す結果であり、仕事を考えないようにすれば必ず疲労や睡眠が改善する、という意味ではありませんが、仕事について考えることに種類がある一方で、仕事から頭を離す時間そのものにも意味があるのです。
私が社会人1〜2年目に遊んでいた『jubeat』やカラオケも、決して無意味ではなかった。
実際に、遊んでいる時間は楽しかったですし、仕事のことを忘れられました。
仕事のことを忘れられる時間は、それだけでも意味があります。
そして、その時間に自分が何を楽しんでいたのかを振り返ってみると、また違う発見があるかもしれません。
私は別の記事で、昔の自分が好きで繰り返していたことを、後から「夢中になっていた時間」として捉え直した経験を書きました。
自分が楽しめることを考えてみたい人は、こちらも読んでみてください。
ただ、ここで区別したいことがあります。
仕事から一時的に離れることと、仕事で抱えている問題を解決することは別です。
気分転換をすることには価値があります。
でも、休み方を工夫するだけでは解決できない問題もあります。
WendscheとLohmann-Haislah(2017)のメタ分析では、仕事上の要求や職場で得られる支援などが、心理的ディタッチメント(仕事をしていない時間に、心理的にも仕事から離れること)と関連していることも報告されています。
だから、仕事のことが頭から離れず、つらい状態が続いているなら、気分転換だけで何とかしようとしなくてもいいのだと思います。
そして、休むことと、仕事の問題に向き合うことは、どちらか一方を選ばなければならないものではありません。
休息を取りながら、状況を変える方法を考えることもできます。
今、自分はどうしたい?
ここまで、仕事について考えることの違いを紹介してきました。
プライベートでもつい仕事のことを考えてしまう自分を、すぐに良い・悪いと判断する必要はありません。
嫌な出来事を何度も思い出しているのか。
何かを改善する方法を考えているのか。
それとも、うれしかった出来事を振り返っているのか。
そして、その思考を自分が負担に感じているのか。
まずは、そうした違いに目を向けてみることに意味があります。
そのうえで、今の自分が何を求めているのかを考えてみましょう。
仕事から離れて、ゆっくり休みたい。
仕事で抱えている問題を、何とかしたい。
今の環境そのものを変えたい。
こうした気持ちは、一つだけとは限りません。
私自身、つらい状況なら環境を変えることも選択肢だと考えています。
同時に、後悔しないために、自分にできることがないかを考えてみる価値もあると思っています。
ただし、何かを「やりきった」ことが、環境を変えるための条件ではありません。
自分で変えられることもあれば、自分だけでは変えられないこともあります。
誰かに相談することも、環境を変えることも、選択肢の一つです。
最後に、3つの問いを残したいと思います。
今、仕事について何を考えていて、どんな気持ちになっていますか?
今の自分に必要なのは、仕事から離れて休むことでしょうか。仕事の何かを変えることでしょうか。それとも、その両方でしょうか?
何かを変えたいなら、自分にできることは何でしょうか? そして、自分だけでは変えられないことは何でしょうか?
仕事のことが頭から離れないとき。
無理に忘れようとする前に、自分が何を考え、どうしたいのかに目を向けてみる。
そこから、自分が納得できる選択肢を探してみるのも、一つの方法ではないでしょうか。
参考研究
- Sonnentag, S., & Bayer, U.-V. (2005). Switching Off Mentally: Predictors and Consequences of Psychological Detachment From Work During Off-Job Time. Journal of Occupational Health Psychology. https://doi.org/10.1037/1076-8998.10.4.393
- Sonnentag, S., & Niessen, C. (2020). To Detach or Not to Detach? Two Experimental Studies on the Affective Consequences of Detaching From Work During Non-work Time. Frontiers in Psychology. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.560156
- Weigelt, O., et al. (2019). My Mind is Working Overtime—Towards an Integrative Perspective of Psychological Detachment, Work-Related Rumination, and Work Reflection. International Journal of Environmental Research and Public Health. https://doi.org/10.3390/ijerph16162987
- Syrek, C. J., et al. (2017). All I Want for the Weekend Is You: The Effect of Unfinished Tasks on Sleep. Journal of Occupational Health Psychology. https://doi.org/10.1037/ocp0000031
- Wendsche, J., & Lohmann-Haislah, A. (2017). A Meta-Analysis on Antecedents and Outcomes of Detachment From Work. Frontiers in Psychology. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2016.02072
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